GTM戦略その3 : バリュープロポジションとは? 顧客に「選ばれる理由」を設計するGTM戦略の基本
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GTM戦略を考える上で、「誰に売るか」と同じくらい重要なのが、「なぜ顧客に選ばれるのか」を明確にすることです。
優れた製品やサービスであっても、その強みが顧客にとっての価値と結びついていなければ、必ずしも選ばれるとは限りません。
そこで重要になるのが、バリュープロポジション(Value Proposition:価値提案)という考え方です。
バリュープロポジションを明確にすることで、マーケティングや営業、プロダクトなどの部門が、共通の顧客価値を軸に活動できるようになります。
1. バリュープロポジションとは?
バリュープロポジションとは、「どの顧客に対して、どの価値を、どのような条件で届けることで選ばれるのか」を明確にしたものです。
単なる製品の特徴や機能の説明ではありません。顧客がなぜ自社の製品やサービスを選ぶのか、その理由を顧客視点で整理することが目的です。
例えば、同じ製品であっても、ある顧客は価格を重視し、別の顧客は導入のしやすさやセキュリティを重視するかもしれません。
重要なのは、顧客が実際に価値を感じるポイントを理解することです。
2. 競合優位性を「顧客に選ばれる理由」につなげる
バリュープロポジションを考える際には、まず自社がどの市場や顧客に対して優位性を発揮できるのかを整理します。
そのためには、競合分析や過去の商談の勝敗分析などを通じて、次のような観点を確認することが重要です。
- どのような顧客や業種で選ばれやすいのか
- どのようなユースケースで価値を発揮できるのか
- どのような競争環境や導入条件で優位性があるのか
例えば、製品の機能が豊富であること自体が、必ずしも競争優位性になるとは限りません。顧客によっては、導入スピードやサポート品質、既存システムとの連携のしやすさが、選定の決め手になることもあります。
つまり、「どの条件で、その強みが顧客に評価されるのか」を明確にすることが重要です。
3. 顧客価値を理解する「Jobs/Pains/Gains」
次に、顧客がどのような価値を求めているのかを整理します。
その際に役立つのが、Jobs/Pains/Gainsモデルです。顧客の状況や期待を、3つの観点から構造的に理解するための考え方です。
Jobs:顧客が達成したいこと
顧客が仕事を通じて実現したい成果や、果たすべき責任を指します。例えば営業マネージャーであれば、売上目標の達成や営業組織の育成などが該当します。
Pains:顧客が抱える課題や困りごと
Jobsを達成する上での負担や制約、不満を指します。例えば、営業活動が属人化している、商談情報が十分に共有されない、といった課題です。
Gains:顧客が得たい成果や理想的な状態
課題が解決された先に、顧客が実現したい状態を指します。例えば、成功した商談の進め方を組織全体で共有できる、営業活動の再現性が高まる、といった成果です。
この3つを整理することで、顧客が何を実現したいのかを起点に、提供すべき価値を考えられるようになります。
4. バリュープロポジションを言語化する
競合優位性と顧客価値を整理したら、次はそれらを実際のGTM活動で使える形に言語化します。
本書では、バリュープロポジションを1〜2文にまとめる際の基本形として、次の構文を紹介しています。
私たちは【特定の顧客タイプ】が、【特定の状況・トリガー】に直面したとき、【主要な課題】を解消し、【得られる成果】を実現します。
例えば、企業向けの会議情報管理サービスであれば、次のように整理できます。
「私たちは、全社で会議データの管理を進める企業の情報システム部門が、情報の分散や管理負荷に直面したとき、安全かつ統合的な会議データ運用を実現します。」
ここで重要なのは、すべての顧客に当てはまる抽象的な表現にしないことです。
「このタイプの顧客には、この価値で選ばれる」という形で、顧客や状況を具体的にすることが、実務で活用できるバリュープロポジションにつながります。
5. 顧客の役割に合わせて価値を伝える
B2Bでは、同じ製品であっても、意思決定に関わる人の立場によって重視する価値が異なります。
例えば、経営層であれば事業への効果や投資対効果、情報システム部門であればセキュリティや運用負荷、現場の担当者であれば日常業務の効率化などが重要になるかもしれません。
そのため、バリュープロポジションを定義した後は、共通する顧客価値を、それぞれの購買関係者に伝わる言葉へと落とし込むことが必要です。
こうして整理したメッセージは、マーケティング活動や営業資料、商談での価値訴求などにも活用できます。
バリュープロポジションは、単なるキャッチコピーではありません。マーケティング、営業、プロダクトなどが、「誰に、どの価値を届け、どう勝つのか」という共通認識を持つための土台なのです。
6. バリュープロポジションとGTM戦略の関係
GTM戦略は、「誰に・何を・どう届け・どう拡張するか」を一気通貫で設計する考え方です。
前回の記事で紹介したICP(理想的顧客)は、どの顧客に優先的にアプローチするかを明確にするためのものです。
一方、バリュープロポジションは、その顧客に対して、どのような価値を提供し、なぜ選ばれるのかを明確にします。
この2つが結びつくことで、ターゲティングからメッセージング、営業活動まで、一貫したGTMを設計しやすくなります。
重要なのは、バリュープロポジションを定義すること自体ではなく、組織全体がその価値を理解し、実際の活動に活かせる状態をつくることです。
詳しく知りたい方へ
拙著『再現性ある成長のつくり方 ― 「売れる仕組み」を一気通貫で設計するGTM戦略』では、バリュープロポジションの定義方法に加えて、市場・顧客・競合の分析、Jobs/Pains/Gainsの整理、ICPの定義など、GTM戦略の土台となる考え方を体系的に解説しています。
「自社はどの顧客に、どの価値で選ばれるのか」をより具体的に考えたい方は、ぜひ書籍も参考にしてみてください。
『再現性ある成長のつくり方 ― 「売れる仕組み」を一気通貫で設計するGTM戦略』
藤原茂晴 著/クロスメディア・パブリッシング